

くすぶる火をたやすな。それが暗い道を照らす灯となる
24分
地下リングで八百長を繰り返すジャンク・ドッグは、南部に言われるまま勝ちも負けも売り渡していた。ある日の逃走劇の果てに出会ったのは、白都財団の令嬢ユキコと、その傍らに立つ王者ユリだった。ギアごと叩き伏せられた男の中に、初めて本気で勝ちたいという欲が芽生える。

二度死んだヤツはいない、バクチ打ちはそう嘯いた
24分
ユリに完膚なきまでに敗れたジャンク・ドッグは、それでもメガロニアの舞台に立つと言い張る。だが出場には、彼が生まれてこのかた持ったことのない戸籍が要る。南部が裏の伝手で用意した偽の身分証に刻まれていたのは、「ジョー」という名だった。

絶望の果ての負け惜しみ。機械はハナから息しちゃない
24分
二五七位から始まったジョーの道は、ランキングを駆け上がるための過酷な調整に明け暮れる。その途中で拾ったのは、サチオという抜け目のない少年だった。寄せ集めの試作ギアでは歯が立たない相手を前に、ジョーはついに装置を脱ぎ捨て、拳だけで倒す。

死神と踊るより、あの娘とブギーを踊りたい
24分
公式戦の舞台に、ジョーは上半身裸のまま、ギアを一切着けずに上がっていく。あざける観客の前で、彼は足さばきだけを頼りに相手の攻撃をかわし続ける。「ギアレス・ジョー」という異名が、その夜から人々の口に上りはじめる。

あんたはどこから来たんだ?向こう岸だよ、地獄さ
24分
次に立ちはだかるのは、両脚を失い軍用ギアで戦う元ボクサー、アラガキだった。かつて南部のもとで拳を握り、その南部に裏切られた男である。因縁を背負ったこの一戦は、ジョーよりも南部自身の過去を殴りつけるものになっていく。

真夏の犬は人を殺したくなる暑さだが、決してへたばりゃしない
24分
アラガキの猛攻に潰されかけながらも、ジョーは立ち上がって勝ちをもぎ取る。試合の後、南部と元教え子のあいだで膿んでいたものが、ようやくほどけていく。その一方で白都ユキコは、メガロニア出場者としてグレン・バロウズの名を発表する。

三の名がつくあの川を渡るのに、往復の船賃は無用だ
24分
白都ミキオは、ジョーの身分が偽物であることを掴み、それを盾に試合を降りろと迫る。周りの人間に累が及ぶことを恐れたジョーは、リングに上がらないという道を選ぶ。不戦敗という形で、頂点への道は目の前で断ち切られる。

あんたの夢の賞味期限を決めるのは、誰かじゃない
24分
南部が調べ上げて突き止めたのは、ミキオの脅しがはじめから虚仮威しだったという事実だった。メガロニアの発表式典に押し入ったジョーは、居並ぶ人々の前で再戦を要求する。ユキコが下した裁定は、最後の一枠を二人の決着に委ねるというものだった。

あの花のつぼみは腐臭をまき散らし、種は土にかえる
24分
ミキオが持ち出したのは、相手の動きを読んで先回りする人工知能つきのギアだった。読まれ続けて追い詰められたジョーは、あえて構えを解き、機械に計算できるものを何ひとつ与えない。狂った演算の隙間に叩き込まれた一撃が、そのまま勝負を決める。

サイは投げられた。ダブルアップでベットするも良し
24分
メガロニアの舞台にようやく立ったジョーに、南部が切り出したのは八百長の話だった。裏社会の藤巻に負った借金の形として、準決勝を捨てろというのである。殴り倒して出ていったジョーの背中を、その話を立ち聞きしていたサチオが見つめていた。

辛気臭い讃美歌はよしてくれ。欲しているのはラッパだ
24分
準決勝の相手は、同じ山を勝ち上がってきたグレン・バロウズだった。一度は離れたはずのサチオがリングサイドに駆けつけ、声を張り上げてジョーを押し上げる。勝利の裏側で、南部は藤巻への借りを返すため、残されたもう片方の目を自ら潰していた。

岸辺にアルバムを残したいなら、三の川から引き返せ
24分
決勝を前に、ユリは自らの身体に埋め込まれたギアを手術で取り除く決断を下す。対等な条件で拳を交えるための、王者なりの筋の通し方だった。目を失った南部は、アラガキの手を借りながら、それでもジョーの背中を押しつづける。

肉は朽ちても骨は残る。それが生を受けた証となる
24分
メガロニアの決勝で、ギアを捨てた二人の男が向かい合う。互いに何ひとつ身にまとわず、ただ拳だけを打ち合う長い夜が始まる。一年の後、頂点に立った男は名前も肩書きも脇に置き、バイクに荷を積んで街を走っている。